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2024.10.11

【多様性をチカラに】洗濯から、セカイを変える/洗濯王子 中村祐一さん|後編


多様性をチカラに変える人々を紹介するシリーズ

ノーブルホームの多様性ある人々をご紹介する連載【多様性をチカラに】。今回は長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」の3代目であり、「洗濯王子」の愛称でテレビ・雑誌など各種メディアでも活躍されている、洗濯家 中村祐一さんに登場していただきました。

前編では「洗濯から、セカイを変える」という信念についてお聞きしましたが、後編ではノーブルホームの設計士関根・インテリアコーディネーター舟生とともに、洗濯をふまえた家づくりや暮らしの楽しみ方について語っていただきました。

洗濯家 中村祐一さんのホームページはこちら
SENTAKU-YUICHI.COM  – 洗濯から「セカイ」を変えるー


大胆に“好き”を取り入れた、洗濯アトリエのある住まい

ご自宅に洗濯アトリエというオリジナリティ溢れる空間を作られた中村さん。今回はご自宅にお邪魔して、間取りや設備を見せていただきました。

関根「今回お住まいを建築される際に、1階に14畳ほどの洗濯アトリエを作られたということですね。最近は物価高騰もあり、好きなものを家に取り入れようとする方が減っているのですが、中村さんはなぜアトリエを作られたのでしょうか?」

中村氏「画家の家なら絵を描くスペースがある、書評家の家なら大きな本棚がある、車好きな人の家ならひたすら車をいじれるガレージがある。それの洗濯バージョンがあっても良いのではと思い、洗濯中心の贅沢な空間を作りました。洗濯がしやすくなったのはもちろんですが、家で過ごす時間が楽しく、できるだけ家にいたいなと思えるようになったことが大きいです。これから家を建てるみなさんも、せっかくなら好きなことにすごく偏った、賃貸では叶わないような家を作ってみてほしいと思います」

スローランドリーで暮らしをもっと楽しむ

洗濯アトリエの中央にあるのが、まるでアイランドキッチンのような作業台。アイロン掛けや畳む作業などに使われているそうです。今回はアイロン掛けがあまり得意ではないという関根と舟生に、キレイなアイロン掛けの方法をレクチャーしていただきました。

中村氏「アイロン自体はどんなものでもよくて、一番のポイントは掛け方です。手で簡単に形を整えて置き、まずはアイロンのスチームや霧吹きで湿らせます。その水分をアイロンで飛ばしてから熱を冷ますと、シワが伸びた状態がセットされます。大きくゆっくりアイロンを動かすことと、冷めるまで動かさずに待つことで、キレイにシワが伸びた状態をキープできます」

舟生「これだけアイロン台が広いと、台の上でいちいち服を移動させる手間もなくて良いですね!私自身、アイロン台を出すのが面倒というのもあって、アイロン掛けへの苦手意識が生まれているので、きちんと間取りの中でスペースが確保されることの重要性を感じました」

中村氏「スペースを取ればその分コストがかかってしまうのですが、そのコストをかけることでその後の家事のやりやすさは格段に変わってきます。洗濯は一生続くので、メリットはかなり大きいと思います」

関根「ノーブルホームでもランドリースペースを設計することは多いのですが、3畳くらいの広さで室内干し・洗面台・収納・洗濯機を設置すると、なかなかアイロン台まで組み込むスペースがなくて。ですが、このように広々としたアイロン台があれば、ゆっくりとアイロンを掛ける時間自体も楽しめそうですね」

中村氏「最近は家事の時短が重視される傾向にありますが、僕は時間をかけて丁寧に洗濯する“スローランドリー”も好きです。ゆっくりアイロンを掛けると、豆から挽いてドリップコーヒーを入れたり坐禅をしたりするのに近い、マインドフルネスな時間を過ごせますよ。ただし、ビジネスで使う服など外向きに着る服は、クリーニング屋さんにお願いしてキレイに洗ってビシッと仕上げてもらうのがおすすめです」

洗濯にフォーカスした住まいのレイアウト

中村さんの洗濯アトリエでは「脱ぐ・洗う・干す・アイロンを掛ける・畳む・収納する」という洗濯の工程を意識してレイアウトしているそう。洗い方や乾かし方を含めて、洗濯をスムーズに行い快適な生活にするための家づくりのポイントについてノーブルホームが手掛ける住宅の図面を見ながらお話を伺いました。


中村氏「基本の考え方は“服の動線”を作ること。服を脱いでから洗ってしまうまでの工程を近くに配置するのがおすすめです。この図面の間取りのように、入浴前に服を脱いだらその近くで洗って干せるとスムーズですし、最終的には畳んでアイロン掛けをして収納するところまで繋がっているととても楽になると思います」

関根「外干しだと紫外線で服が傷みやすいので、室内干しがよいと聞きましたが、乾かし方についてはいかがでしょうか?家を建てるお客様としても、室内干しを希望される方が非常に増えている印象です」

中村氏「洗濯物を乾かすときは、室温の高さ・湿度の低さ・空気が動いていることの3つがポイントです。例えば、ランドリースペースの窓から光を入れると、太陽光の熱で室温が上がって乾きやすくなります。雨の日は窓を開けると湿度が上がってしまうので、窓を開けずに換気扇などで湿度を強制的に出した方が乾きやすいです。浴室干しでもずっと湿気が出ていると乾きませんが、換気扇で空気の流れをつくって湿度を下げれば乾きやすくなります。洗濯物を干す場所よりも、やはり乾きやすい条件が揃っていることが大事です」

関根「空気の流れと室温・湿度って重要ですよね。設計士の立場から見ても、ランドリースペースとクローゼットが隣り合わせになっている間取りの場合、ちゃんと空気の流れを考えて設計しないとクローゼットにカビが発生してしまうリスクがあります。生活者の方が想像できない部分だからこそ、改めてプロとして提案していきたいです」

洗濯で服の選択肢を広げ、自分らしい暮らしをひらく

最後に中村さんから、洗濯を通して伝えていきたいことを伺いました。

中村氏「最近は服が消耗品として捉えられてしまっていますが、本来は財産。洗濯のやり方を見直してもっと長く着られるようになれば、少し高価でも快適な服を選ぶなど、選択肢も変わってきます。スーツや部屋着など服ごとに必ず役割があるので、どれでもいいやと服を選ぶのではなく、その服を何のために着るのか?を少し考えてみていただければと思います」

関根「たしかに、服って何となく着る日もありますが、特別な日におしゃれをして気分を上げたり、ここぞという時にはスーツを着て気合いを入れたりすることもありますよね。ノーブルホームは“暮らしをひらく”をミッションとして掲げているのですが、服を着るシーンやお手入れ方法を見直すことも、自分らしく暮らすこと、自分らしく生きることに繋がるのではと感じました」

中村氏「そうですね。洗濯そのものも大切なのですが、洗濯は着るためにするものだということを忘れないようにしたいです。家を建てること自体が目的ではなくて、建てた家でどう過ごすか?が一番大切だということと同じですね。きちんと着る、楽しく着る、快適に着るということが一番大切なので、色んな暮らしのシーンに合わせた服を選んで、楽しく快適に着ていただくために洗濯やクリーニングにも目を向けていただけければと思います」

 

中村さんから学んだ、洗濯を通した豊かな暮らしのひらき方。どのように洗い、どのように干し、どのような服を選ぶのか。なんとなく考えるのではなく、きちんと見直したいていきたいと思いました。
洗濯から暮らしを見つめ直す方が1人2人と増えていけば、社会全体へと波及し、セカイが変わっていくというメッセージを胸に、ノーブルホームでは今回学ばせていただいたことを家づくりに活かし、これからもお客様にとって最高の暮らしの実現に向けて邁進します。

「【多様性をチカラに】洗濯から、セカイを変える/洗濯王子 中村祐一さん|前編」はこちらから